ジークフリート Siegfried
北欧神話の最高神オーディンの血を引く
ゲルマン神話に登場する戦士である。
古ノルド語では、シグルズという。
竜殺しの英雄として知られ、その活躍は
中世ドイツの英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』や
１３世紀の『ヴォルスンガ・サガ』で語られている。
少年時代から王宮を出て征旅を行い
ノルウェーのニーベルンゲン族を倒して
その呪われた財宝と名剣バルムンクを奪う。
悪竜ファーヴニルを倒すなど、多くの軍功を立てる。
このファーヴニル退治の際、魔力のこもった竜血を浴びて
全身が甲羅のように硬くなり、いかなる武器も受け付けない
不死身の体となる。
しかしこの時、背中に菩提樹の葉が一枚貼り付いていて
血を浴びられず、この一点のみが彼の弱点となった。
ドイツ「ニーベルンゲン博物館」のリーフレットより
その物語には様々な異説があるが、ジークフリートは
北欧神話の最高神オーディンの末裔で
英雄シグムントを父に持つ。
剣を引き抜く シグムント （アーサー・ラッカム画）
父の形見の名剣グラムを振るって、数々の武功を上げた。
グラム Gram
英雄の未来が切り開かれるよう願いを込めて
オーディンが作成した聖剣
オーディンは、大木の幹に、この剣を突き刺し
抜く事が出来た者に、剣を託そうと言い残し去る。
グラムを木の幹に突き刺すオーディン
ヨハネス・ゲーツ画（1889年）
オーディンの子孫である、シグムント只一人抜く事が叶い
英雄として、強大な力を得ると同時に
後の悲劇をも背負うことになる。
ジークフリートの父シグムントは、ジークフリートが
誕生する前に戦死してしまう。
母は、デンマーク王子に助けられるが
ジークフリートの養育は、デンマーク王の鍛冶屋だった
レギンに託された。
養父レギンは、ジークフリートを一人前の戦士にするべく
知識や技術を教え、名剣グラムを与えた。
実は、養父レギンには、ある思惑があった。
それは、レギンの兄であるファーブニルが
魔法でドラゴンの姿に変えて守っている
黄金を生み出す「ニーベルングの指輪」
を手に入れようとしていたのだ。
レギンは、ファーブニルの弟であり
兄の財宝を独り占めにするために
ジークフリートをファーブニルの元に差し向けたのだった。
そして、ジークフリートはレギンの示唆により
ドラゴンの姿をした魔人ファーブニルを倒し
ニーベルングの指輪を手に入れる。
さらに、ジークフリートは竜の血の力によって
不死身の体を手に入れた。
だが、ジークフリートが手に入れた黄金の指輪は
持ち主を必ず滅亡させるという呪いの指輪だった。
その後、自分をも殺そうとしているレギンの本心を
鳥のシジュウカラに教えてもらったジークフリートは
竜退治を終えたジークフリートを殺そうとしたレギンを
返り討ちにして、旅に出る。
旅に出たジークフリートは
ある時、オーディンによって炎の壁に閉じ込められていた
女戦士ワルキューレ（ヴァルキリー）の一人である
ブリュンヒルドという女性を助け出す。
ブリュンヒルド Brunhild
（ガストン・ビュシエール 1897年）
そして、彼女に恋したジークフリートは
ブリュンヒルドに「ニーベルングの指環」を渡してしまった。
ブリュンヒルドは、死すべき運命にあった王に
勝利をもたらしてしまった事で
オーディンの怒りを買ったヴァルキリーである。
罰として、地上界に送られ
炎の壁の中に封じ込まれてしまうが
ジークフリートによって助けられ
彼を愛するようになる。
だが、ジークフリートと王女を結婚させようと目論む
王妃グリームヒルドに、ジークフリートは忘れ薬を飲まされ
ブリュンヒルドを忘れてしまった。
そして、ジークフリートが王女と結婚してしまった事から
ブリュンヒルドは、裏切られたと思い込んで
ジークフリートを殺してしまう。
のちに真相を知った彼女は
我が身を焼き滅ぼす結末を迎える。
映画 「ニーベルングの指環」
心ならずとも、ジークフリートは
ブリュンヒルドを裏切る事になり
それを知った彼女は、ジークフリートを殺してしまう。
しかし、後悔したブリュンヒルドは
ジークフリートとあの世で結ばれることを願い
自害し、自らの肉体を焼き滅ぼして
ジークフリートのあとを追った。
まさに、指輪の呪いが成した悲劇である。
Ring of the Nibelungs